【戸建て住宅】民泊で必要不可欠な「消防設備」とは? 対応策や事例などを交えて解説【消防法/民泊新法】

【戸建て住宅編】民泊で必要な「消防設備」 対応策・事例を交えて解説

 民泊事業を運営するにあたって、消防法の遵守は欠かせない重要な要素です。本稿では、「一戸建て住宅」を利用して住宅宿泊事業(民泊新法)を運営する場合に必要となる消防法の要件や、その具体的な対策について解説いたします。

民泊新法の概要

 民泊新法(正式名称:住宅宿泊事業法)は、2018年6月15日に施行されました。この法律は、民泊を適切に管理し、無許可営業や利用者のトラブルを防止するために制定されたもので、主なポイントは以下の通りです。

  • 届出制:民泊を営業するには、所轄の行政機関へ届出を行う必要があります。
  • 営業日数の制限:年間の営業日数は180日以内と制限されています。
  • 安全衛生基準:利用者が安心して宿泊できるよう、衛生管理や設備に関する基準が定められています。

消防法と民泊の関係

消防設備のイメージ

 住宅を利用して民宿を営業する場合、家主の有無(家主居住型・家主不在型)や宿泊室(宿泊者が就寝するスペース)の床面積に応じて、消防法令上の用途が判定されます。その判定結果に基づき、求められる対応は以下の通りです。

消防法令上の用途の判定

スクロールできます
宿泊者滞在時の家主の有無宿泊室の床面積法令上の消防設備の対応
不在にならない(家主居住型)50㎡以下一般住宅と同じ扱い(ハードル低)
不在にならない(家主居住型)50㎡を超える旅館やホテルなどと同じ扱い(ハードル高)
不在になる(家主不在型)面積の条件なし旅館やホテルなどと同じ扱い(ハードル高)

 家主居住型の場合、宿泊室の床面積が50㎡以下か、それを超えるかで対応が異なります。50㎡以下であれば、消防法上では一般住宅と同様の扱いとなり、この場合、各居室やキッチンなどに住宅用火災警報器を設置するだけで基準を満たすことができます。

 ただし、戸建て住宅の一部を民泊として活用する場合、民泊部分の面積や割合によって、必要な消防設備が異なる点にご注意ください。

厚生労働省HPより

法令上求められる消防設備の対応

 では、宿泊事業として利用する住宅の消防設備が「旅館やホテル等と同じ扱い」になるとき、つまり家主居住型で宿泊室の床面積が50㎡を超える場合や、家主不在型の場合には、どのような対応が求められるのでしょうか。原則として設置が必要な場合と不要な場合に分けて、以下にまとめました。

スクロールできます
主な対応原則設置が必要原則設置が不要
①自動火災報知器建物の延べ面積が300㎡以上の場合同面積が300㎡未満で、原則階数が2以下の場合
②誘導灯全てのもの避難経路が明確に分かるなど避難に支障をきたさない場合は免除も可能
③消火器次のいずれかに当てはまる場合
・建物の延べ面積が150㎡以上
・地階・無窓階・3階以上の階で床面積が50㎡以上のとき
左記以外の場合

 このほか、カーテンやじゅうたん等は「防災性能のあるもの」と規定されています。

自動火災報知器の設置について

 上記表①の自動火災報知器とは、受信機や発信機などを設置する本格的な消防設備を指します。ただし、以下に当てはまる場合は、設置すべき消防設備の基準が緩和される場合があります。

スクロールできます
種別必要な設備備考
一般住宅と同じ扱いの場合住宅用火災警報器家電量販店やネット通販等で2000円~3000円程度で購入できる
上記表の①「同面積が300㎡以下で原則階数が2以下の場合」簡易な自動火災報知正式名称は特定小規模施設用自動火災報知設備 無線のため受信機は不要
3階建ての場合でも特定の要件を満たせば設置可能

誘導灯について

 上記表の②誘導灯については、原則として設置が義務付けられていますが、以下の要件を満たす場合は必要な消防設備が免除、あるいは代用の設備の設置が認められる場合があります。

1)1階の要件

  • 各居室から直接外部に容易に避難できる、もしくは各居室から廊下に出れば簡明な経路により容易に避難口へ到達できること
  • 住宅の外へ避難した者が、当該住宅の開口部から3m以内の部分を通らずに安全な場所へ避難できること
  • 宿泊客に対して避難口等の案内を行うことや、見やすい位置に避難経路図を掲示する等、容易に避難口の位置を理解できる措置を講じること

(2)2階以上の階の要件

  • 各居室から廊下に出れば、簡明な経路により容易に階段へ到達できること
  • 廊下等に非常用照明装置を設置、居室に携帯用照明器具を設置するなどして、夜間停電時でも避難経路を視認できること
  • (1)③の要件を満たしていること

 (1)(2)ともに、各号の要件をすべて満たす必要があります。

事例を交えて整理

不動産のイメージ

 これらを踏まえ、どのような設備が必要なのか、簡単な事例を挙げて整理したいと思います。

  • 物件:一戸建て(2階)
  • 民泊のタイプ:家主不在型
  • 建物の延べ面積:200㎡
  • 宿泊室の床面積:55㎡

 この場合、基本的に以下のような消防設備が必要と考えられます。

スクロールできます
設置する消防設備備考
特定小規模施設用自動火災報知設備建物の延べ面積が300㎡以下で、階数が2以下のため
誘導灯要件次第で免除
消火器建物の延べ面積が150㎡以上のため
防災性能のカーテン・じゅうたん等

まずは消防署へ事前相談

 ここまで消防設備に関する対応について説明してきましたが、これはあくまで法律上の原則論であり、具体的な判断基準は管轄の消防署によって異なる場合があります。

 そのため、同じような立地・建物でも各都道府県・市町村によって、求められる消防設備が異なることも十分に考えられます。民泊事業を始める際には、法令を見て独自に判断するのではなく、必ず所轄の消防署へ相談することをオススメします。

参考資料:総務省消防庁「民泊において消防法令上求められる対応等に係るリーフレット」

このフォームに入力するには、ブラウザーで JavaScript を有効にしてください。

よかったらシェアしてね
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!