※営業電話はご遠慮ください
【最新】箱根町の民泊ルールを徹底解説! 上乗せ条例・申請手続き基本ガイド

雄大な自然に囲まれたエリアで、芦ノ湖や大涌谷、箱根神社といった観光スポットが点在する神奈川県の箱根町。美術館や博物館のほか、温泉とアートが楽しめるのも魅力で、癒しと文化を堪能できる人気の観光地です。
当記事では、そんな人気スポットで民泊(住宅宿泊事業や旅館業)を行うためにはどのような手続きが必要なのか、また地域特有のルールがあるか等について、詳しく解説していきます。
箱根町で民泊を営業するための手続きは2種類

種別 | 住宅宿泊事業(民泊新法) | 旅館業(簡易宿所営業) |
---|---|---|
手続き方法 | 届出制 | 許可制 |
営業可能地域 | 全国 (住居専用地域も可能) | 全国 (住居専用地域は不可) |
床面積 | 1人あたり3.3㎡以上 | 33㎡以上 (宿泊者数が10人未満の場合→3.3㎡×人数) |
営業日数 | 年間180日以内 | 年間365日可能 |
消防設備 | 必要 (緩和措置あり) | 必要 |
手続きの難易度 | 低 | 高 |


詳細については、上記リンクをご覧いただければと思いますが、届出・許可申請をするために必要な基本要件は以下の通りです。
住宅宿泊事業(民泊新法)
- 人の居住の用に供されていると認められる家屋であること
旅館業(簡易宿所)
- 玄関帳場(フロント)、あるいはその代替設備が設置されていること
- 周囲約100m以内に「学校(幼稚園、小学校、中学校など)」や「保育所」などの保護施設がある場合、旅館施設の営業がその保護施設の環境を著しく害するおそれがないこと
共通
- 施設に「台所・浴室・便所・洗面設備」が設けられていること
- 破産者や暴力団等の欠格事由に該当しないこと
- 適法な消防設備が設けられていること(消防法関連)
- 施設が営業可能なエリアにあること(用途地域の制限)
- 建物の構造が適法であること(建築基準法関連)
このほかにも様々な要件が定められていますが、少なくとも上記の内容は抑えておく必要があります。
箱根町の独自ルール(上乗せ条例)

住宅宿泊事業
箱根町では、民泊事業の実施により地域住民の生活環境の悪化等を防ぐため、独自の規制を設けています。
住宅宿泊事業の実施が制限される区域と期間については、次のような規定が定められています。
■都市計画法に規定する第一種低層住居専用地域のうち、箱根都市計画特別用途地区建築条例に規定する第一種観光地区制限区域では、以下の期間中の営業が禁止。
- 「3月1日正午~6月1日正午まで」
- 「8月1日正午~9月1日正午まで」
- 「10月1日正午~12月1日正午まで」
※制限区域の詳細については、県が公表しているこちらのファイルをご覧ください
旅館業
こちらは箱根町特有のルールではありませんが、公衆浴場の衛生管理及び構造設備に関し、神奈川県の条例では以下のような基準が設けられています。
衛生措置の基準
- 浴槽水中の遊離残留塩素濃度は1リットル中0.4ミリグラム以上
- ろ過器を設けず、加温設備等と浴槽を配管で接続して浴槽水を循環させる場合には、これらの配管等を適切な方法で清掃、洗浄又は消毒を行うこと
- 水位計配管は、適切な方法で生物膜を除去すること
- 気泡発生装置等を設置している場合には、定期的に清掃及び消毒を行うこと
- オーバーフロー水を浴用に供しないこと
構造設備の基準
- 貯湯槽は完全に排水できる構造とすること
- 浴槽における原湯又は原水の注入口は、浴槽の水面の上部から浴槽に落とし込む構造とすること
- ろ過器等は、完全に排水できる構造とすること
- オーバーフロー水を浴用に供する構造でないこと
- 気泡発生装置等を設置する場合には、連日使用している浴槽水を用いる構造ではないこと
…など。
また、玄関帳場又はフロントを設ける場合は、①玄関を容易に見通すことができること② 宿泊者名簿に記入させるための受付台を有すること③ 客に直接面接できる構造設備であること…といった要件を満たす必要があります(条例別表)。
事業者が遵守すべき営業上のルール

- ■宿泊者の衛生の確保
-
「ダニやカビなどが発生しないよう除湿を心がけ、定期的に清掃、換気等を行う」「寝具のシーツ・カバーなど直接人に接触するものは、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替える」などをして宿泊者の衛生を確保すること。
- ■宿泊者の安全の確保
-
法令に沿った「避難経路」の表示や、災害時における宿泊者の円滑かつ迅速な避難を確保するため、宿泊者に対して避難場所等に関する情報提供を行うこと。
- ■宿泊者の快適性及び利便性の確保
-
宿泊者が外国人観光客の場合、外国語を用いて「届出住宅の設備の使用方法に関する案内」「移動のための交通手段に関する情報を提供」「火災、地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内」などの措置を講じること。
- ■宿泊者名簿の備付け
-
宿泊開始までに、原則対面により宿泊者それぞれについて本人確認を行うこと。対面以外の方法では、住宅に備え付けたテレビ電話やタブレット端末等によるICT(情報通信技術)を活用した方法等により行うこと。
- ■周辺地域の生活環境への悪影響の防止
-
「騒音防止に関する事項」「ごみ処理に関する事項」「火災防止に関する事項」などについて、書面あるいはそれらを閲覧できるタブレット端末等を居室に備え付けること。
- ■周辺地域の住民からの苦情対応
-
苦情及び問合せについては、深夜早朝を問わず常時、応対又は電話により対応すること(※宿泊者が滞在していない間も)。
- ■標識の掲示
-
公衆の見やすい場所に、交付された標識を継続的に掲示すること。
- ■都道府県知事等への定期報告
-
届出住宅ごとに、毎年2月・4月、6月・8月・10月・12月の15日までに、直前2ヶ月前の「宿泊させた日数」「宿泊者数」「述べ宿泊者数」「国籍別の宿泊者数の内訳」を都道府県知事等へ報告すること。
※例:12月15日までに、8月・10月分の上記データを報告
民泊施設で温泉を使用する場合
箱根町といえば温泉地としても有名ですが、民泊施設で温泉を提供する場合は、温泉法により管轄の保健所への利用許可申請が必要です。さらに、事業者は利用客から入湯税を徴収し、町に申告・納入する義務があります。
箱根町の観光状況
箱根町が発表した令和5年入込観光客総評によると、日帰り・宿泊を合わせた観光客数は前年比約112%の1951万で、宿泊客に限定すると約393万人とのこと。その背景として、新型コロナウイルスが収束し、インバウンド需要が回復したことはもちろん、各種旅行支援の実施が大きく影響しているようです。
今後自治体は、国の補助金等を活用した宿泊施設の改修や、箱根町の魅力を伝える旅行ガイドの育成にも力を入れていくそうなので、さらなる観光事業の発展に期待が持てるでしょう。
まとめ

このように、箱根町で宿泊施設を営業するには、用途地域や設備条件などの基本要件を満たすだけでなく、町独自の基準をクリアする必要があります。また、近隣住民の生活環境を守るため、宿泊者の衛生・安全管理、苦情対応、定期報告など、営業開始後もさまざまなルールを遵守しなければなりません。
地域の文化や環境に配慮しながら、適切な民泊サービスを提供することが、長期的に安定した営業を続ける上で必要不可欠といえるでしょう。
※当記事は令和7年2月に作成したものです。