※営業電話はご遠慮ください
【民泊新法】住宅宿泊事業の始め方 許可手続き・注意点などを専門行政書士が解説

住宅宿泊事業(民泊新法)について
コロナ禍が明け、外国人観光客の増加に伴い、再び大きな盛り上がりを見せている住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)。民泊の届出住宅数は2024年7月時点で過去最多の約2万5,000件を記録しており、今後のさらなる成長が期待される注目のビジネスです。
本記事では、民泊を開業するために必要な手続きや営業後の注意点、さらにはメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
民泊新法の届出要件

民泊事業者になるための要件は、大きく分けて「欠格事由の有無」「施設に関する要件」「設備に関する要件」の3つです。
欠格事由の有無
- 心身の故障により住宅宿泊事業を的確に遂行することができない者(※当規則第六条の二)
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 住宅宿泊事業の廃止を命ぜられ、その命令の日から5年を経過しない者
- 禁錮以上の刑、またはこの法律若しくは旅館業法の規定により罰金の刑の執行後、3年を経過しない者
- 暴力団員等
- 未成年者でその法定代理人が、①~⑤のいずれかに該当する場合
- 法人で、その役員のうち①から⑤までのいずれかに該当する者があるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
居住に関する要件
民泊とは、「一般的な住宅」を宿泊施設として活用するサービスのことです。そのため、民泊として利用する住宅や、その住宅に設置されている設備などについて、さまざまなルールが定められています。
民泊における住宅とは?
届出を行う住宅は、次のような家屋でなければなりません。
- 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
- 入居者の募集が行われている家屋
- 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋
「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」について
特定の人が現在生活している家屋を指します。自宅の一部を民泊として貸し出す場合、このケースに該当します。この家屋が住民票上の住所であれば、問題なく営業が可能で、これを「家主居住型」と呼びます。
一方、家主が住民票上の家屋に住んでいない場合(=家主不在型)は、「入居者の募集が行われている家屋」または「随時、所有者や賃借人、転借人が居住の用に供している家屋」のいずれかである必要があります。

「入居者の募集が行われている家屋」について
住宅宿泊事業を行っている際に、その物件を売りに出したり、賃貸の募集をするなど、入居者の募集を行っている家屋を指します。適正な価格で募集が行われていれば問題ありません。しかし、相場を大きく超える価格で募集し、誰も申し込まない状況が続く場合、「意図的に募集を避けているのではないか」「民泊ビジネスなど投資目的ではないか」と判断され、行政機関への届出が認められない可能性があります。
「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」について
最後の③については、別荘やセカンドハウスなど「生活の本拠として」使用していない家屋を指します。“少なくとも年1回以上は使用している家屋”という条件付きですが、こちらは比較的緩い要件となっています。
相続した建物が「現在は居住しておらず、将来的に居住することを予定している家屋」であれば③に該当します。もし使っていない空き家があれば、民泊として活用してもいいかもしれません。
設備に関する要件
届出を行う家屋には、以下の設備が設けられている必要があります。
- 台所
- 浴室
- 便所
- 洗面設備
これらすべては、1棟の建物内に設けられている必要はなく、いわゆる「離れ」でも同じ敷地内の中心となる建物(=母屋)と併せて「ひとつの住所」として届出することできます。
また、建物のよってはユニットバスのようなひとつの設備で複数の機能を有している設備もありますが、このような場合でも問題ありません。
さらに防災上の観点から、宿泊所には何かしらの消防設備を設置しなければなりません。設置すべき消防設備については、建物の規模や形状、営業形態などで異なるため、物件を購入あるいは賃貸する前の段階からご自身で物件の調査また専門の代行業者へ相談することをオススメします。


住宅宿泊事業(民泊)で開業するメリット・デメリット

メリット
- 手続きの難易度が低め
- 住居専用地域での営業も可能(一部例外あり)
- 開業資金(設備費用)を抑えられる場合もアリ
手続きの難易度が低め
ホテルや旅館などの宿泊施設は、旅館業法に基づき「許可」申請が必要であり、この手続きは比較的難易度が高いです。一方、民泊の場合は「届出」で営業が可能で、許可申請に比べてハードルが低いのが特徴です。
両者の違いを簡単に説明すると、「許可」とは「本来法律で禁止されている行為について、審査基準を満たした場合に特別に認められるもの」です。一方、「届出」は「特定の行為を行う際に必要書類を提出し、不備がなければ完了する手続き」というイメージです。
住居専用地域での営業も可能
民泊の場合、旅館業法に基づくホテルや旅館では営業できない「住居専用地域」での営業が原則可能です。そのため、物件探しの選択肢が大幅に広がります。ただし、各自治体が独自のルール(いわゆる上乗せ条例)を定めている場合があるため、注意が必要です。
一方、旅館業での営業は「第一種住居地域」「第二種住居地域」「準住居地域」「近隣商業地域」「商業地域」「準工業地域」に限られます。なお、「工業地域」での営業は、旅館業・民泊のいずれも不可となっています。
開業資金(設備費用)を抑えられる場合もアリ
届出する事業者が住む建物(※事業者が住民票登録している)の一部を民泊として貸し出す「家主居住型」か、事業者などが常駐しない「家主不在型」か、宿泊室の床面積がどれくらいの広さか…などの条件次第で、消防設備の費用を安く抑えられる場合があります。
住宅宿泊事業(民泊)で開業するデメリット
一方で、民泊新法のデメリットは「営業可能数が年間180日以下」という点です。したがって、365日のうち180日までしかお客さんを泊めることができません。
民泊新法・特区民泊・旅館業法の簡単比較表
住宅宿泊事業(民泊新法) | 特区民泊 | 旅館業(簡易宿所営業) | |
---|---|---|---|
手続き方法 | 届出制 | 認定 | 許可制 |
営業可能地域 | 全国 (住居専用地域も可能) | 国家戦略特区の指定区域のみ (住居専用地域も可能) | 全国 (住居専用地域は不可) |
最低床面積 | 1人あたり3.3㎡以上 | 原則、1部屋の床面積が25㎡以上 | 33㎡以上 (宿泊者数が10人未満の場合→3.3㎡×人数) |
営業日数 | 年間180日以内 | 制限なし (2泊3日以上の滞在が条件) | 年間365日可能 |
消防設備 | あり (緩和措置あり) | あり (6泊7日以上の滞在期間の施設の場合は不要) | 必要 |
手続きの難易度 | 低 | 中 | 高 |
営業上の注意点

- ■宿泊者の衛生の確保
-
住宅宿泊事業者は、定期的な清掃・換気などをして宿泊者の衛生を確保しなければなりません。
具体的には「ダニやカビなどが発生しないよう除湿を心がけ、定期的に清掃、換気等を行う」「寝具のシーツ・カバーなど直接人に接触するものは、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替える」などを行う必要があります。
- ■宿泊者の快適性及び利便性の確保
-
住宅宿泊事業者は、宿泊者が外国人観光客の場合、外国語を用いて「届出住宅の設備の使用方法に関する案内」「移動のための交通手段に関する情報を提供」「火災、地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内」等、その他の必要な措置を講じる必要があります。
- ■宿泊者名簿の備付け
-
住宅宿泊事業者は、宿泊者の「氏名・住所・職業・宿泊日・旅券番号(外国人の場合)」を宿泊者名簿に記載し、これを3年間保管しなければなりません。
- ■周辺地域の生活環境への悪影響の防止
-
住宅宿泊事業者は、宿泊者に対して「騒音防止に関する事項」「ごみ処理に関する事項」「火災防止に関する事項」などについて、書面や口頭で説明する義務があります。
- ■周辺地域の住民からの苦情対応
-
宿泊者によるトラブルや迷惑行為などで、周辺住民から苦情が寄せられる恐れがあります。
この事態に、適切かつ迅速に対応するため、住宅宿泊事業者は「深夜早朝を問わず、常時、応答又は電話により対応」「緊急時は必要に応じて、警察署、消防署、医療機関などの機関に連絡した後、自らも現場に急行して対応」などができるような体制作りが必要になります。
- ■標識の掲示
-
住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に、交付された標識を継続的に掲示しなければなりません。
- ■都道府県知事等への定期報告
-
住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、毎年2月・4月、6月・8月・10月・12月の15日までに、直前2ヶ月前の「宿泊させた日数」「宿泊者数」「述べ宿泊者数」「国籍別の宿泊者数の内訳」を都道府県知事等へ報告しなければなりません。
※例:12月15日までに、8月・10月分の上記データを報告
必要書類

法人の場合
届出書・添付書類一覧(法人)
必要書類 | 備考 |
---|---|
住宅宿泊事業届出書 | |
不動産の登記事項証明書 | |
住宅の地図 | 各設備の位置、間取り及び入口、階、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積 |
賃貸人・転貸人の承諾書 | ※届出者が貸借人・転借人の場合 |
規約の写し | ※分譲住宅の場合 |
管理組合に「民泊を禁止する意思がない」旨を確認した誓約書 | ※規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合 |
法人の登記事項証明書 | |
定款 | |
身分証明書 | 破産者に該当しないことを証明するもの。届出者及び役員全員分 |
管理業者から交付された書面の写し | ※住宅宿泊管理業者に委託する場合 |
誓約書 | 欠格事由に該当しない旨を記載したもの |
入居者募集の広告その他それを証する書類 | ※住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当する場合 |
「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する場合は、それを証する書類 |
個人の場合
届出書・添付書類一覧(個人)
必要書類 | 備考 |
---|---|
住宅宿泊事業届出書 | |
不動産の登記事項証明書 | |
住宅の地図 | 各設備の位置、間取り及び入口、階、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積 |
賃貸人・転貸人の承諾書 | ※届出者が貸借人・転借人の場合 |
規約の写し | ※分譲住宅の場合 |
管理組合に「民泊を禁止する意思がない」旨を確認した誓約書 | ※規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合 |
法定代理人の登記事項証明書 | ※未成年者で、その法定代理人が法人である場合 |
身分証明書 | 破産者に該当しないことを証明するもの |
管理業者から交付された書面の写し | ※住宅宿泊管理業者に委託する場合 |
誓約書 | 欠格事由に該当しない旨を記載したもの |
入居者募集の広告その他それを証する書類 | ※住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当する場合 |
「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する場合は、それを証する書類 |
手続きの流れ

お客様が希望する物件の所在地、営業形態、物件の内装や設備、営業開始予定日などをお聞きいたします。まだ物件が決まっていない段階であれば、物件探しからお手伝いさせていただくことも可能です。
希望する物件・場所で営業可能か等の事前調査、保健所や消防署等の行政機関と事前相談を行います。
自治体によっては、事業を営もうとする住宅の周辺住民に対して、事前に「住宅宿泊事業を営もうとする旨」「事業者の連絡先」「事業開始日」などを書面で交付する必要があります。その書類はこちらで作成しますので、お客さまはそれをポスティングするだけでOKです。
届出書や図面等の添付書類を作成し、届出住宅の所在地を管轄する行政機関へ提出します。
届出が受理されると、都道府県知事から届出番号が記載された通知書の発行及び標識が交付されます。その標識を指定の場所に掲示して、ようやく営業スタートです
まとめ
民泊を開業するために必要な手続きや要件についてご説明しました。旅館業と比べると比較的開業しやすい分野ではありますが、それでも注意すべきポイントがいくつかあります。特に、地域ごとに異なる条例には十分留意する必要があります。
当事務所では、民泊新法に基づく開業手続きはもちろん、物件探しのサポートも承っております。開業をご検討中の方や興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
◆対応地域◆
■神奈川県
横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、逗子市、三浦市、秦野市、厚木市、大和市、伊勢原市、海老名市、座間市、南足柄市、綾瀬市、箱根町など
■東京都
〇23区
千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区
〇23区外
八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国分寺市、国立市、福生市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市羽村市、あきる野市、西東京市など
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